百物語 その10 『逢坂の関』

「で? ここはどこなんだい? 普通の……駅の改札に見えるんだけど」
「そう? なら、そうなのね」
「君は?」
「何に見える?」
「制服着てるから、学生なんじゃないの?」
「なら、そうなのね」
「ふーん。まぁいいけど。で。なんで、君以外のみんなは、あんなに急いでいるんだい?」
「あなたは急がないの?」
「んー? なんか、今までさんざ急いだ気がするから、ちょっとゆっくりするよ」
「そう。んら、そうすればいいわ」
「ん。ところで、みんなどこへ向かっているの? あっちに行く人と、こっちに向かう人がいるけど」
「行く人と、帰る人がいるの」
「なるほど。で。君はどっち? 行く人? 帰る人?」
「どちらでもない。私はここにいるの」
「ここに? ずっと?」
「ええ」
「1人で?」
「ええ」
「じゃあ、さみしいね」
「そう? そうでもないわ」
「ふーん。僕、いてあげようか? ここに」
「いいけど。でも……」
「でも?」
「そのうち、あなたも一度帰らないと」
「ああ、そうか……うーん。確かに、そうかもしれないね」
「ええ」
「でも、しばらくここにいていい?」
「どうぞ」
「ありがと。ところでさ?」
「なに?」
「僕、死んでるの?」
「どう思う?」
「うーん……ま、だとしたら仕方ないかな。もう少しゆっくりしたら帰る」
「ゆっくりしていってね」
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