百人一首物語 その19 「逢わでこの世を」

「おい、スティーブン。お前は何故反対なんだ?」
船長に理由を聞かれたので、俺は、ここで反転し地球へと帰還する事はリスクが高いからーーと答えた。
船長は、この変更は計画の範囲内であり、リスクは無視出来るほどに小さい事を、皆にあらためて伝え、そして言った。
「スティーブン。お前は地球に残してきた妻がいるだろう。今、転進すれば、1865日は帰還が早くなる。お前は賛成すると思ったのだが……」
そんな船長の言葉に、他の乗組員も、遠慮するなーーと声をかけてくれた。
でも、遠慮じゃなく、この外宇宙探索船の乗組員として、合理的な判断をしているだけだと伝えた。
「わかった。スティーブンの意思は尊重されるべきだ」
船長は言うと、次にゴトウを指名した。
ゴトウが意見を述べ始めた。
俺は、このまま、旅が続く事を心から祈った。
俺は、怖いのだ。
20年地球に帰ってこない事を条件に、俺は妻と結婚した。俺は莫大な報酬をそっくり妻に渡し、一つだけ条件をつけた。
20年後にも、妻でいてくれる事……。
五年も早く帰ったら、果たして、俺は歓迎されるのだろうか。20年後だけでなく、その時も、俺の妻なのだろうか。
「難波潟 短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや」
大阪湾に生えてる葦の節くらい、短い時間でも逢えないとか、あんた何やってんのよ! とかそんな感じ。


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