百人一首物語 その20 『みをつくし』

私は、真っ白で、限りなく広い部屋で目が覚めた。それは、世界がまるで色彩を忘れてしまったかのような場所だった。私はそこで目を覚まし、そして起き上がった。
私は、行くあてもなく、歩いてみた。
それでも、やはり世界は真っ白で、真っすぐ歩いているのかさえ、更に言えば上下の区別さえ、今では曖昧になっていた。
私は、死んだのだ。
ここは天国だ。
私は思った。
呪術師に、私はお金を払い、願いを伝えた。
この身を滅ぼしてもいいから、彼に会いたい……と。
そうして、私は死んだ。彼に会う事なく。
せめて、一目会いたかった……そう思った瞬間、世界は急に色彩を帯びはじめた。私の立っている場所から色が噴出するように立ち上がり、周囲を様々な色に染め抜いた。色色の狭間から光がはみ出し、上で塊り空を作り出した。世界が急に立ち上がった。
私は、新宿の伊勢丹の前にいた。私を気にせず、人々は行き交い、すり抜けて行った。
私は、周囲を見渡した。私がここに来る理由がない。あるとすれば、場所ではなく、この、行き交う人だ。
きっと……きっと、ここに彼が来るのだ。
私は、本能で悟った。
私は彼の姿を探した。人込みの中、彼の姿を見た瞬間、ガコン!と音がして、世界は色を失った。私は、白い部屋へと連れ戻されていた。
目の前に、タワーの展望台にあるようなコイン式の双眼鏡が設置されていた。コインの投入口には「転生権1回5分」と書かれていた。
気が付くと、手には、5枚のコインが握りしめられていた。
私は、その一枚を使った。

「わびぬれば  今はた同じ  難波なる  みをつくしても  逢はむとぞ思ふ」
なんか、死んでもいいから、身を尽くしてもいいから、会いたいなーって意味。

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