百人一首物語 その22 『あらし』

山頂から赤くなってゆく木々の色と一緒に、冷たさを含みはじめた風が、山から下りてくる。
秋の風が、収穫の済んだ田を駆け抜けると、村は一気に秋の気配が漂いはじめる。
畔では秋の虫が盛大に鳴き、どこからも、賑やかな声が響いてくる。お互いに助け合いながら、村中の収穫を終えた今、人々の声には、疲労が見え隠れしながらも、どこか一年の苦労を労う喜びが隠されている。どこか、浮かれる気分を抱えたまま、村人達は、村の周りに深い穴を掘りはじめる。穴の底に、他家を斜めに切った槍を埋め、上から井桁に組んだ蓋を被せてゆく。間違って村人が落ちてしまわないよう、真ん中に小さな赤い布きれを結びつけておく。一年かけて溜め込んだ真っすぐな枝をの先を削り、矢羽根を着けて、槍へと仕上げて行くのは女の役目だ。村のそこいら中で労働歌と共に、号令と共に、気合いの声が上がる。体力はある。体が慣れぬ動きに戸惑っているだけなのだ。子どもが犬を追いかけながら、村の中を走り回り、伝令を伝えてまわる。屋根屋根には、順番に梯を立て、石を沢山上げていく。
いよいよ時が近付いてくると、家々の戸板や床板を剥がし、村を取り囲むように立てた竹に立て掛けて、即席の防壁を組み築いていく。
今年は本物の弓矢や槍、少しばかりの防具も用意した。鍬や鋤も研ぎを入れた。それに、もうすぐ、都に武術の道場で修練を積んできた庄屋の三男の弥太郎も帰ってくる。
村は異常なまでの高揚を隠せない。同じくらいのある不安を、なんとか押し隠すように。
もう少しで、あの山の上から、山賊がコメを狙いに下りてくる。
今年こそは、嵐に全てを飛ばされ、全てを奪われ、全てを失うような事があってはならない。
村人の思いは同じだ。

「吹くからに  秋の草木の  しをるれば  むべ山風を  あらしといふらむ」
山から秋風が吹くと、草木が枯れちゃうから、山の風を嵐って言うんだよー。って、漢字を使ったギャグ?
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