百人一首物語 その32 『しがらみ』

眼下に青と白のマーブル模様の地球を見下ろしながら、僕は作業を続けた。常に地球に足を向けて作業するのは、いかにも宇宙酔いを防ぐ初級者っぽくて見た目は悪い事この上ないのだけど、気分的に、そうでないと落ち着かなかった。
アームを動かし、ひとつずつデブリ(宇宙のゴミ)を取り除いて行く。軌道上に散乱したデブリを、こうやって堰き止める事で、回収の効率化を図る事が出来るようになった。これは、今日のような宇宙開発の発展に寄与する技術の一つである。難点は、こうしてたまに奇麗にしなければならない事だが、それでも、昔のようにラグランジュポイントを繋ぎ合わせながら、拾い集めて廻る事に比べれば、本当に楽な話だ。
「知ってるか? しがらみってな、元の意味は木の枝で作ったダムの事なんだとさ」
相棒の小林が、インカムで呟く。
「じゃあ、世間のしがらみとかって?」
「つまりは、ココに引っ掛ったゴミみてぇなもんってことさ」
そういって小林は笑った。
確かにそうなのかも知れない。こんなに地球から離れても、人は寄り添わないと生きて行けない。しがらみのなかで生きている。それはゴミのような存在の人間にはふさわしいのかも知れない。
でも、どうだ。
この太陽の光を輝くデブリの美しさ。
電磁ネットに搦め捕られたデブリの輝きは、小川を流れる紅葉のような美しさではないか。
僕は、作業の手を止め、しばし、その美しさに魅入ってしまうのだった。




「山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり」
山奥の川の竹で作ったダムに引っ掛った紅葉がきれいだな(作文)

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