百人一首物語その33『久方の』

空は青空、陽はやわらかく。
花の雲は、地に淡い影。
風ふくごとに、雲千切れ
ひらりはらりと螺旋を描く。
「平和やなー」
「そやなー」
「儚にゃいもんやなー」
「にゃにがぁ?」
「桜や」後藤は舞い散る桜の花びらを目で追いながら言った。「咲いた思たら、すぐ散りやる。もうちっと、落ち着いてもエエんちゃうかなぁ」
「そないして、惜しまれとるうちが花や」
「まぁなぁ」後藤は、ベンチの背に体を預け、空を仰ぎ見た。「花は七分咲き、空は青空。こないは花見日和は、そうないな」
「せやな」俺は頷く。空には雲雀の声。姿は見えない。
「儚にゃいもんやなー」
「にゃにがぁ」
「せやから、散ってまう事が、や」
「まぁなぁ……」
目の前を、近所の銀行の受付嬢が通り掛かる。俺も、後藤も顔だけ起こして、遠ざかって行くストッキングの膝の裏に、心の中で、さよならを言う。
「儚にゃいよなぁ……」
「せやなぁ……いつかは……散ってまうんやからな」
「エッチしたいなぁ……」
「そやなー」



「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」
のどかな日なのに、何故、桜の花は慌ただしく散ってしまうのか問題。

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