百人一首物語その44 「逢う事」

眠りから醒めると、頬が涙で濡れていた。
また夢を見ていたらしい。
私は起き上がると、洗面所で顔を洗い、台所で水を一杯飲んだ。
夢の内容は覚えていない。
しかし、確信はあった。
また、あの人の夢を見ていたのだ。
あの人とは、もう二度と会えない。
あの人は、死んでしまったのだから。
あの人の肉体は、もう別の物質と変化し、あの人の精神は枷を失い、霧散してしまった。
しかし、形を失ったあの人の精神の欠片は、私を事あるごとに激しく揺さぶる。
私に、思い出せ、忘れるな、と。
あの人の欠片に逢う度に、あの時の、言葉に出来ない感情を、思い出すのだ。
そして、我が身を恨むのだ。
あの人を、恨むのだ。


「逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし」
全く会えないって訳でもないので、余計に、恨んじゃったりなんかしちゃうのだ。

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