百人一首物語その45 「あはれ」

「ああ、こうやって、僕は死ぬのだな」
壁一面に貼られたポスターで微笑むギャルゲーや、アニメの少女たちに見下されながら思った。
ふとしたキッカケで、僕は動けなくなってしまった。
このまま死んでたら、誰が気付くのだろう。
このまま死んでたら、いつ気付くのだろう。
冷房の為に窓を締め切ってあるから、僕が腐っても、なかなか気付かれないだろう。もしかすると、除湿冷房は、僕を上手い具合に腐らずにミイラにしてしまうかも知れない。ペルーのミイラは放っておくだけで、ああなるらしいから。僕も、そうなるかも知れない。
銀行の預金には、それなりの額が入っている筈だ。僕が、健康や心を代償に得たお金だ。退職金も入金される予定だ。おそらくは、僕を完全なミイラにするまで、電気が止められる事も、家賃滞納で追い出される事もないだろう。
こうして、僕は、発見される機会を失うだろう。
腕を動かし、なんとかAVのリモコンを手にした。HDプレイヤを動かし、未だ見ていない録画を上から順に流すように設定する。
低音重視の5.1chスピーカーが、陽気な深夜CMを奏でる。
近所迷惑にならないように、音量を絞る。
さぁ、本編が始まった。
1TBを全て見終わる事が出来なかったらどうしよう……それだけが今気掛かりな事だ。





「あはれとも 言ふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな」
かわいそーと言う人も思い浮かばぬまま、私は死んでいくのだなぁ

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