百人一首物語その64 「あさぼらけ3」

妖怪は、大阪に姿を見せ、川を上り、3日かけて、ついに京が見えるところまで近付いてきていた。今までの足の早さだと、今日のうち、少なくとも夕方には、京に入ってきてしまうだろう。
我々に残された機会は、今しかなかった。
予想出来る出現地帯が全て見渡せる丘から土御門は、報告を受けると、すぐさま伝令の馬を飛ばし、同時に、式神打った。
土御門の手を離れた式神は、川を沿って北に上り、あさぼらけを追い上げた。伝令を受けた近衛兵も、火矢を射かける。
土御門は奔った。
土御門が今から向かう場所に、あさぼらけを追い込むのだ。
宇治の川面には、霧が漂い、その白い霧の向こうに黒い巨体がうごめいていた。
朝ぼらけは近付いてきていた。近くで見ると大きかった。
土御門は東の山を見た。まだ、日は昇っていなかった。だが、空はすいぶん白く、明るくなっていた。
日の光があさぼらけに届けば、朝ぼらけは消えてしまう。
時間の勝負だった。
川面には、網代木にお札が巻き付けたものが仕掛けてある。それをあさぼらけが消える前に踏んでくれるか。その勝負だった。



「朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木」

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。