百人一首物語その74 「山おろし」

友達に勧められたので、市の外れにある山の上のお寺へ行った。そんな、お寺とか行っても今更だし、山登るって聞いただけでマジ勘弁してよって感じだったんだけど、山のふもとの鳥居とかくぐって、緑のトンネルぐいぐいぐいぐい歩いてる間に、気持ちがすがすがしくなってきて、だんだんその気になってきた。石段を登り切って赤い方の鳥居をくぐった頃には、なんだか盛り上がってしまっていた。小さなお堂にぶら下がっているふっとい紐をぶんぶん振って大きな鈴をガランゴロン鳴らして手を合わせた時には、すっかり願い事が叶いそうな気がしていた。だから、目を開けて振り向いた時にお坊さんが立ってたんだけど、驚かなかった。そういう事が起こってもおかしくないと。そんな気持ちになっていたのだ。お坊さんに「悩んでいるようだね」なんて、いきなり言われても、まぁ、こんな気持ちの良いところで働いてて、毎日あの道を通っているのなら、それくらい出来るだろうなとか思っちゃうくらいで、自然に受け止めていた。まぁ、簡単に言うとサイコーにハイだった訳。「男の子のコトかね?」びっくりした。その時は本当にビックリした。まぁ冷静に考えれば、縁結びで有名なお寺なので、当たり前なんだけどさ。でも、その時は訳も分からず、うんうん激しく頷いたよ。お坊さんは続けた。「悩みがあるなら、昔ながらの呪(まじない)に託してみるも良い。今から耳を閉じて、この山を下りなさい。鳥居をくぐって、最初に耳にした言葉に従いなさい」そりゃ、その通りにしたよ。耳を両手で塞いで、石段を走っておりた。途中、おじさんに話しかけられたけど、無視した。下までおり、あわてて鳥居をくぐった。ごうと風が吹いた。前にいた50過ぎのおばちゃんが、服を押さえながら「あら、山おろし」と言った。……山おろし……。そうか、ヤツが電話にも出ないのは、やっぱりそういう事か。
私は堕ろす事にした。



「憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを」
思い人がつれないので、初瀬の縁繋ぎのお寺行ってきたけど、山おろしみたいに激しく冷たくしてなんて、お願いしてないっつーの!

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