百人一首物語その78「千鳥」

友達に変わり者の陰陽師がいる。彼は、腕は確かなのに、ある欠陥から立身出世を望まず、須磨の関守などという閑職を希望し、都を後にした。
ある日、須磨の方に用事があるので、彼のところに寄った。彼は、大変喜んで、私を歓待してくれた。私は彼の勧めに答え、質素ながら広大な屋敷に一泊した。
朝を迎え、私はビックリした。
あの寝坊で都いち有名だった彼が、私よりも早く起きていたのだ。
「おい、どうしたんだ。こんな時間に起きているなんて。君がこんな早く起きれるのなら、都で大きな役目に就けるぞ」
そう言うと、彼は首を振って答えた。
「あ、無理。コイツが起してくれるだけだから」
そう言って、彼は手に握られた、紙の千鳥を見せてくれた。
「なんじゃこれ」
「淡路から毎朝早朝に飛んでくる。式神だ。これが飛んでくるから、仕方なしに起きる」
「式神? 誰がやってるんだ」
「さぁ。わからない。でも術式からして、古くに設置された術式が、主亡き後も駆動してるって事らしい。実害はないから放ってある」
「でも式神だろう?害はないのか?」
「ないよ。単に眠れなくするためのものらしい。便利だぜ?君も使うか?」
「いや、使うって言われても、明日、京に戻るから」
そう言って断ると、彼はニヤリと笑っていった。
「そういうな。朝、俺を起した式神をそのまま、京のお前の家にまで送らせてもらうよ」
「そんな事出来るのか?」
「出来るよ。じゃあ、そういう事にやっとくから。
「わかった」
私は、それから私は京都へ帰り、疲れ果ててぐっすり眠ってしまった。
次の日、私のところに、淡路島の千鳥が来ていた。しかし、彼の家から、再び命令を与えられ、京都まで飛んできただけあって、自宅に着いたのは昼過ぎだった。
どうやら使えないようだ。



淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守」

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