百人一首物語その84 「長らへば」

【M新聞8月31日朝刊 みんなのこえ欄】より

昔が懐かしい
佐々山 トメ  無職・178歳(長野県百曲村)
ヒトより長く生きたからでしょうか、この頃は昔の事を妙に思い出してなりません。私が、村に住んでいた頃は酷かったものです。天候一つで作物の出来は左右され、作物の出来は、村の命の数を左右しました。幼い女児は遊廓に売られ、幼き男児は帰る事のない奉公に出され、乳飲み子は乳房をくわえたまま干涸び、老人は山に捨てられました。
今と比べると、本当に酷い時代だったと思います。でも、私には、その頃が懐かしくてならないのです。何故だか、恋しくてならないのです。
最近。風の噂で、私がまだ書類上も生きている事を知りました。家族は、私を山に捨てておきながら、死亡届を出していなかったのです。それは優しさでしょうか。それとも、別の感情でしょうか。その家族も全員鬼籍にはいったであろう今となっては、確かめようもありません。山に捨てられた私は、何故、生きているのでしょう。




「長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき」

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。