百人一首物語その89「たまの」

「私も、仕事柄、曰く付き物件とかに接する事が多いんでね。色々なところで勉強させてもらっているんですけどね。人というのは……まぁ人でなくてもそうなんですけど。肉体と魂に分別できる訳です。これは普段は決して分けられない訳なんですけど、何かの拍子に、この繋がりが弱くなっちゃう時がある訳なんですよ。幽体離脱とか、そういう感じですよね」
私は、その不動産屋さんの営業トークを聞いていた。そのトークは本当に滑らかで抑揚のある聞き取りやすいものだった。私は、はぁ……と頷くより他にはなかった。
「でも肉体と魂は決して外れる事はない。それは、魂の緒と呼ばれています。魂はおたまじゃくしのような形をしていて、その長い尾は、肉体にまで届き、、結ばれているという訳です」
「では、ウチに出た幽霊は? 祖母なんて亡くなられてから、随分立っていますよ」
私は聞いた。すると、不動産屋はニヤリと笑って言った。
「ええ。ですから、その魂の緒が、何かに結ばれているようなんですよ。だから、その幽霊は、いつまでも成仏せずに、部屋の隅でいるんです」
そう言って不動産屋さんは、そう言った。
「ど、どうすればいいですか?」
私の問いに、不動産屋は答えた。
「簡単です。魂の緒を見つけ出して、その結び目をほどけばいいんですよ」
「はぁ」私は溜息ともに返事をした。
「たまの緒よ  絶えなば絶えね  ながらへば  忍ぶることの  弱りもぞする」
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