百人一首物語その93「渚」

人工的に作られた小川に、笹舟がひとつ、またひとつと流れていく。きれいに折られた舟は母親、形の崩れた舟は女の子が拵えたものだろう。小川の先は小さな水たまりになっていて、藤棚がそれを囲んでいる。藤棚の作る日陰に作られたベンチには、子ども連れが数組腰掛けて、何か話をしている。
また、笹舟がふたつ、ふざけあうようにもつれながら流れてくる。笹舟を追って、ゆっくり小川べりを歩いていた幼女が、突然大きな声を上げ走りだした。下の方から他の子供たちの歓声も聞こえてくる。
水たまりの中央から、水か勢いよく吹き出していた。日の光に照らされ、水しぶきが白く輝く。その輝きの滴の中を、服を脱いだ幼女たちが輪を描くように走り回る。笹舟を作っていた子も、追いついた母親にワンピースを脱がされ、裸になってその輪に加わる。
私は、その夢のような光景を、目を細めて見つめる。
昨今は色々厳しくなって写真に撮ったりする事は出来なくなったけど、こうして見る事だ出来るだけで幸せだ。
こんな世の中が、長く続けばいいのになぁ。
「世の中は  常にもがもな  渚漕ぐ  あまの小舟の  綱手かなしも」
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