百人一首物語 その97 「藻塩」

「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、あそこで藻塩焼いてるじゃない。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、この焼き鯵。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、この道の上のミミズ。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、このせんべい。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
「ちょっと……まぁいいわ。お大事に」
「うん……」
「来ぬ人を  まつほの浦の  夕なぎに  焼くや藻塩の  身もこがれつつ」
来ない彼を待つ私の心は、あそこで焼かれている藻塩みたいに焦がされているのだわ。

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