「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、あそこで藻塩焼いてるじゃない。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
・
「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、この焼き鯵。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
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「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、この道の上のミミズ。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
・
「ちょっと、どうしたの? ぼうっとして」
「うん……ほら、このせんべい。あれって、彼への恋心に身を焦がしてる私みたいだなって」
・
「ちょっと……まぁいいわ。お大事に」
「うん……」
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・
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「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」
来ない彼を待つ私の心は、あそこで焼かれている藻塩みたいに焦がされているのだわ。
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